「ぼらと彼」 第四章
平和というより何もすることがなかったので平凡な毎日が続いたが、まだギョロ目の猫は覗くし、子供も達学校の帰りには覗くのが日課になっていて、一日ゆっくりというわけにはいかなかった。
ここへきてまだ一か月と少ししかたたないのだから仕方ないけど、ギョロ目の猫はどうしても好きになれなかった。やはりギョロ目が来ると体ががちがちになっていた。それでもこの頃は彼が私の為に餌をもって来た時は私が餌を全部食べ終わるまで水槽の所についていてくれるので、その時だけはリラックスすることができた。でもまだあのギョロ目の猫が相変わらずうろついていたが、最近は私を見る目が少し優しくなったように思えたのは水を飲むにもそっと飲むようにになったからだ。
子供達はこの頃毎日のように私の所にきて何か話しかけるようになった。私はすこしずつ子供達になれてきて、この頃では子供達がきてくれるのが楽しみになった。最初は大騒ぎしていた子供達も私を覗く時はそっとねと優しい声で話かけてくれるようになった。私は相変わらず人間の言葉はわからなかったけれども、その声のトーンで少しだけ優しく話かけてくれる事がわかるようになった。
ある日の事、子供達はもう一人の友達を連れてきて私に紹介してくれた。この子な、転向してきたばかりなんだ、友達になってやってくれよな。と彼らは私に一生懸命説明をしてくれた。都会風の垢ぬけた彼はとても寂しそうな顔に見えた。私は水の上で元気よくぴちっとはねて見せた。すると彼の顔が気のせいか笑いかけてくれたように見えた。
いつものように帰り道私の所に来る子供達だったが都会から移住してきた彼はいつも寂しそうだった。私はどうしたの?と聞いてみた。すると驚いた事に彼は私に話かけてきた。言葉はわからなかったけれども、少し涙ぐんでいるようにも見えた。私はせいいっぱい水槽の中ではねてみせた。彼は有難うというと涙を拭いて笑顔でまた明日といって帰っていった。それっきり彼の姿を見る事がなかった。いつも来ている友達の話だと病気で遠くの大学病院へ入院したという。こんな時人間の言葉が話せたらととてもくやしかった、
今この塀の外に出る事ができたらあの都会から来た彼にあいにいって元気になれよっていってあげたいと。そんな時だった。私を釣り上げた彼が私を覗き込んでねえ河口にいってみようよと言った。
それがどういう意味かはわからなかったが、私はうんとうなずいた。
彼は私を釣り上げた時の水槽に入れると今までいた懐かしい河口に行き私を河口に放してくれた。あの水のにおいも風景も依然と全然変わっていなかった。私を河口に放した彼はとても寂しそうで私はしばらく彼がたたずむ河口で泳いでいた。彼は私をみて早く仲間の所へ行きなといってくれた。わたしは彼の言葉にひとはねすると仲間の方へ泳いでいった。
もう私から彼の姿は見えなかった。仲間たちがお帰りとみんな集まってきてくれた。私はとても嬉しかったが、河口にいつまでたたずんでいた彼のさびしそうな顔がとても気になっていてみんなにその話をすると、ではその河口へ行ってみようという事になり、みんなで私が吊り上げられた河口へ行ってみたが、そこに彼の姿はもうなかった。そして都会から越してきて大学病院へ入院したという彼もその後どうなったのか知ることはなかった。
今私は人間すべてが私達を捕まえて食べてしまうなんて事はないんだと彼の優しさを思いだしている。
完
駄作でしたが、読んで頂きました皆様に感謝申し上げます。
有難うございました。
おはようございます。
このお話も終わりですね、もっと展開があるかと期待していましたが、サイトも休止になるようですので、いい潮時だと思って読ませていただきました。
やはり放流されたんですね、最初からこのパターンは予測できました、私が食べる事をあおった時の反応でそう確信していましたから。
もう少しボラと釣り人の交流に物語を踏み込ませていたら、より感動的な終わり方だったかもしれませんが、サイトの休止に合わせれば致し方ないですね。
それと自分の作品を駄作とは言わないように、読み手はそんな先入観を持って読むかもしれませんので、私は良い作品だと思いますよ、全体的に大雑把な事を除いては(笑)。