そこにバス停は無いし、雨の日は暗く淋しそうに見える、その場所に存在する風景そこに傘をさし立っている人が居た。
一体何を見ているのだろう。
私は見ようとしていた、
その心まで感じ取ろうと見つめていた。
身長を、靴の色を、服装、は髪型は。
その色は。
そして雨はその時季特有の降り方をしていて風景の一部を黒く塗り潰していた
雨は、
止む瞬間は訪れなかった
その人はいつまでもそこに居た、まるで自分の家のひと部屋のような錯覚を私に起こさせた。その人は男性なのか女性なのかわからないままだ
何故わからない事を、そのままにして途中まで、
描きかけた手紙のように机の上に放置した
それは多分私が書いた手紙
抜け殻のような封筒がその存在を誇示して居た
私の言葉の雫が散って居る
拙い思いはこの灰色の雲に溶けてしまった
窓 ガラスに 着いた 雫で
その人の存在が淡く滲んで逝く
おかしいな時間は平等である筈なのにあちら側の軸は滲んで逝く、そして瞬きするともとに戻る過ぎた雫の道は瞬きで元に戻るのに私はガラスのフイルターでしか見えていない
そんな気持ちが首周りを掠めていて、
向こう側からは私は見えて居るのかな
同じ空気感に包まれていて
それは本当に同じなのだと良いけど、私の心は疑り深いことを知っている
私の言葉が向こう側に届いている事がありますようにガラス窓に指で触れ見た
ああなんて遠いのだ触れるという事が、その場所は
私の風景の一部なのだ
呟いてみる。
届きますように溜息では無い
言葉の祈りが。
芥子春孤
雨とガラスの関係から主人公を投影している
その表現の仕方に引き付けられるように読んでしまいました。
そしてこの詩の最後がとてもしずかではあるが強い意志をもってこの詩を閉じている所は読者にうんうんとうなずかせてしまう
何回かよみ直したくなる詩でした。