もう二度と投げることは出来ないと医師から注げられたとき、僕は頭の中が真っ白になって、気づけば病院のベッドの上にいた。
退院が決まると真っ先に、かつて夢を追いかけた場所に白い小さな、けれど重みのある球を持って向かった。
少し盛り上がった土の上に立ち、かつて幾度となく苦しい思いも嬉しい思いも味わった方向へと右腕を上げようとした。
右肘に今まで感じたこともない痛みを感じて、僕は思わず地面に両手をついてうずくまった。
憧れの舞台に立つために、勉強も、恋愛も、なにもかもを捨てて進んできたこの道が、こんな形で終わるなんて。。。
僕は思わず手で土をつかみとりながら大粒の涙を流していた。
涙が出なくなるまでその場にうずくまった後、心のどこかが軽くなったような気がした。
憧れの舞台には立てなかったけれど、それだけが人生ではないという静かな感情が沸いてきた。
これからは勉強も恋愛もいろんなことを人並みにする、普通の高校生として生きていくんだ。
今の僕には重すぎる球を残して、その場をゆっくりと立ち去った。
けいとさん
ショートストーリー形式で、テーマもおもしろい!
一つ気になったことは ... 何らかの道を極めよう、それで生きていこうと、情熱を注いで生きて来た人にとって、夢をあきらめざるを得ない状況から、進むべき次の道へ、気持ちを切り替えるのには、相当な期間、日にちがかかると思うんだよ。( 自分の経験から ) ゆめの