福引の行列に並んだ
冷たい風で福引券が飛ばされないように
ゆっくり一歩ずつ順番が近づく
夢のない目で八角形を見つめる
がらがらとハンドルを回す
出てきたのは馬の面だった
面をつけて歩きだす
うしろで
大当たりの鐘がなる
鐘にしてはずいぶんと重い響きだったので
振り返ると
地面のほかに何もない
地平線が見えるほど
みんな消えてしまった
向こうから馬が走ってくる
何もないから白馬だとすぐわかる
白馬は私に
「人間はみんな死んでしまいました
かわいそうに…」
と教えてくれる
私は尋ねる
「私たち馬もみんな死んだのか」
白馬は答える
「いいえ、私たち馬はみな無事です
さあ、一緒に行きましょう」
二頭の馬は蹄の音を立てて
仲間のもとへ走り去る
二列の蹄の跡が
土煙と風に消える
シノハラさん、こんにちは。
街では、買い物等のおまけに、福引券をもらう季節になりましたね🎟
気軽な運だめしの話かな? って、ちょっとワクワクして読み始めました。
そしたら ... すごーくすごーく素敵な、大人なファンタジーに出会えたじゃないですか!
現実世界の哀しみ全部を、その命で背負ってしまっていたのでしょうか、主人公の "私" は。 すべてが失われた世界に残った、たった二つの命を馬に喩えて謳った世界 ... 悲しくて、寂しくて、泣けてくる。でも、それは絶望したからじゃない。 白馬が、希望を連れて来てくれた気がしたから。 ゆめの
シノハラ様、はじめまして。
作品を拝見させていただきました。
一通り読んでみたところ詩というより、一つのファンタジー小説のような印象を受けました。
福引といったちょっとした運試しかと思いきや、大当たりで人類が滅びる展開が面白いです!
馬の面をつけてから主人公が人間から馬に変わる表現が中島敦の「山月記」を彷彿とさせますね。
他作品も読んでみたいです!
田代ひなの様
はじめまして。読んでいただき、またコメントいただきありがとうございます。返信が遅くなりすみません…。
「山月記」は虎になっちゃう作品ですね。なるほど。実は安部公房の「赤い繭」あたりをイメージした作品なんですね。
今後もよろしくお願いいたします😀